東北地方の三次元地震波減衰構造

東北地方の3次元P波減衰構造を推定した論文です.論文の内容は第二著者の羽田くん,第三著者の速水さんが修士論文で行った解析をベースにして,安定してt*を推定できるようプログラムを改良しました.解析ではまずコーナー周波数をコーダ波スペクトル比で推定し,次にサイト特性とt*を同時インバージョンで求めています.サイト特性とt*を同時インバージョンで求めるところが本研究のポイントです.最後に,t*を用いて三次元インバージョンです.得られた結果は,マントルウエッジの斜めの低速度域(上昇流と解釈)は高減衰であり,また下部地殻の高減衰域と火山分布がよい対応を示しています.さらに,速度構造で見られていたマントルウエッジでのfinger状の異常は減衰構造では見られないことから,マントルウエッジではHot fingerではなく,Wet fingerが発達していることが示唆されます.減衰構造の解析は速水さんの修論(2008年頃)から取り組み始めたのですが,執筆が遅くこの論文が1本目となります.ここ数年は関東のテクトニクスや稍深発地震の解析を主に行っていたので,島弧マグマ活動に関連する久しぶりの論文です.

J. Nakajima, S. Hada, E. Hayami, N. Uchida, A. Hasegawa, S. Yoshioka, T. Matsuzawa, and N. Umino
Seismic attenuation beneath northeastern Japan: Constraints on mantle dynamics and arc magmatism
J. Geophys. Res., 5838-5855, doi:10.1002/20013JB010388, 2013.   LINK


西南日本深部の大規模上昇流

西南日本の上部マントルに大規模な上昇流があることを指摘し,それは中国地方の日本海沿岸に分布する第四紀火山の「根」ではないかと議論しています.また,紀伊半島下では,上昇流がフィリピン海スラブを突き抜けて上昇しているようにみえることから,紀伊半島の高3He/4He異常の原因は,その上昇流であるという解釈をしました.紀伊半島の高3He/4He異常の原因をフィリピン海スラブの下に求めた最初の論文です.また,西南日本に足を踏みれた最初の論文でもあります.

J. Nakajima, and A. Hasegawa
Tomographic evidence for the mantle upwelling beneath southwestern Japan and its implications for arc magmatism
Earth Planet. Sci. Lett., 254, 90-105, 2007.   LINK


東北地方のマントル上昇流の定量的解釈

Nakajima et al. (2001, JGR)で得られた東北地方のマントルウエッジの速度構造を,Tekei (2002,JGR)の結果を用いて定量的に解釈した論文です.博士論文の一部です.得られた結果は,マントルウエッジでは深さ毎に異なる流体分布をしており,流体を 含むポアのアスペクト比は,背弧側では大きく(~0.1),火山フロント直下では小さい(~0.01)ことがわかりました.武井さん@地震研にはTakeiモデルの詳細を教えて頂き,論文の構成等の相談にも乗って頂きました.

J. Nakajima, Y. Takei, A. Hasegawa,
Quantitative analysis of the inclined low-velocity zone in the mantle wedge of northeastern Japan: A systematic change of melt-filled pore shapes with depth and its implications for melt migration
Earth Planet. Sci. Lett., 234, 59-70, 2005.   LINK


宮城県鬼首地域のマグマ供給系

宮城県鬼首地域の詳細な速度構造を推定し,鳴子火山や1962年宮城県北部地震(M6.5)と下部地殻の不均質構造の関係を議論した論文です.博士論文の一部で,長町-利府断層周辺の微細構造との比較という意味で行った研究です.地味な地域での解析だと思っていたのですが,その後の「地殻流体」研究等で,この論文も脚光(?)を浴び始めました.

J. Nakajima, and A. Hasegawa
Tomographic imaging of seismic velocity structure in and around the Onikobe volcanic area, northeastern Japan: Implications for fluid distribution
J. Vol. Geotherm. Res.127, 1-18, 2003.   LINK


減衰構造から求めた東北地方下の温度構造

減衰構造から東北地方の温度構造を推定した論文です.減衰構造は,Tsumura et al. (2000,Tectonophysics)のデータを使わせて頂きました.博士論文をまとめるにあたり,マントルウエッジの温度構造を何とかして知りたいと思い,過去の論文を読みあさって思いついた方法です.ただし,メルトの存在は減衰の不均質に影響を与えないという仮定で温度構造を推定しているので,あくまでも「First try」です.その後,Nakajima et al. (2013, JGR)では自分で減衰構造を推定してみました.結果の定量的解釈はまだ不十分です.

J. Nakajima, and A. Hasegawa
Estimation of thermal structure in the mantle wedge of northeastern Japan from seismic attenuation data
Geophys. Res. Lett., 30, 10.1029/2003GL017185, 2003.   LINK


東北地方中央部の地殻内の地震波構造

東北地方中央部のトモグラフィの論文.1997-1999の東北合同観測のデータを使用していますが,ターゲットは主として地殻内です.修論の一部です.解析領域の一部だけをインバージョン出来るように趙さんのコード(Zhao et al., 1992, JGR)を改良しました.その結果,下部地殻の低速度,高Vp/Vs域が火山の分布と非常に良く対応することがわかり,マントルウエッジの構造と合わせて考えることで,斜めのマントル上昇流が島弧火山の根っこであるということを明瞭に示しました.

J. Nakajima, T. Matsuzawa, A. Hasegawa and D. Zhao
Seismic imaging of arc magma and fluids under the central part of northeasternJapan
Tectonophysics341, 1-17, 2001. LINK


東北地方の地震波構造とマグマ活動

東北地方のトモグラフィの論文です.1997-1999の東北合同観測のデータを使用しています.私の初めての投稿論文で修論の主要なパートです.マントルウエッジにはスラブにほぼ平行な斜めの低速度域が存在すること,それは火山フロント下でモホ面にぶつかることなどを明らかにしました.趙さん(当時愛媛大)にはプログラムの使い方を教えて頂きました.なお,同じ年に同じ著者で2本の論文(JGRとTectonophysics)が出版されているので混同して引用されることも多々あります....

J. Nakajima, T. Matsuzawa, A. Hasegawa and D. Zhao
Three-dimensional structure of Vp, Vs, and Vp/Vs beneath northeastern Japan:Implications for arc magmatism and fluids
J. Geophys. Res., 106, 21843-21857, 2001.   LINK