非地震性すべりと地震発生  こちら


九州下のスラブ内地震

九州下に沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動について,その分布,応力場,クラスター活動等を改めて調査しました.九州下ではプレートが急角度で沈み込むことがわかっていましたが,その微細構造はわかっていませんでした.本研究では,九州下のフィリピン海スラブ内の地震が深さ方向に不連続に変化する原因として,深さ約100km以浅はスラブ地殻内,それ以深はスラブマントル内で発生しているというモデルを提唱しました.このモデルは二重深発地震面の深さ分布を説明することができます.また,スラブ内地震が発生しない領域があることや,九州-パラオ海嶺の沈み込みと地震活動の関係,海洋底の年代変化と地震分布の関係などを議論しています.

J. Nakajima
Revisiting Intraslab Earthquakes Beneath Kyushu, Japan: Effect of Ridge Subduction on Seismogenesis
J. Geophys. Res., 124, doi:10.1029/2019JB017869, 2019   LINK


伊豆北方のフィリピン海スラブ

中部日本に沈み込むフィリピン海スラブ内の孤立した地震活動を解析してみました.この地震活動では2006年にM3.1の地震があり,気象庁によって決められたメカニズム解は低角逆断層型でした.Matsubara et al. (2008)ではこの地震をプレート境界上の地震であると解釈してます.本論文では,M3.1の周囲で発生している41個の地震の震源決定を行い,37個はM3.1の地震よりも深部(つまりスラブ内)で発生していることを明らかにしました.また,4つは明らかにフィリピン海スラブよりも浅部のマントルウエッジで発生しており,そのうちの2つは深さ55 kmに位置しています.火山地域下のマントルウエッジの深さ55kmで通常の地震が発生しているという報告はこれまでなかったと思います.スラブ内地震とその直上のマントルウエッジ地震の震央はほぼ同じであることから,局所的に含水化したスラブでスラブ内地震が発生し,そこから上盤側に水が放出されていると解釈しました.この論文だけでは結論は出せませんが,孤立した地震活動は「なぜそこで地震が発生するのか」を私たちに教えてくれる大切な情報だと考えています.

J. Nakajima
Isolated intermediate-depth seismicity north of the Izu peninsula, Japan: Implications for subduction of the Philippine Sea plate, Earth Planets Space, 70:11, doi:10.1186/s40623-018-0779-7, 2018. LINK


3.11後に活発化したスラブ内地震

2011年11月14日に房総半島南端下のフィリピン海プレート最下部(深さ67km)でM4.1の正断層地震が発生し,地震活動が急激に活発化しまし た.この地震活動を詳細に調べた結果,M4.1の後に発生した地震は相似地震を含むこと,その震源は6ヶ月で約6km浅部に移動すること,応力降下量は1-40MPa程度であることなどがわかりました.東北地方太平洋沖地震(本震)から8ヶ月が経過した後に活発化したこの不思議な活動を説明するために,本震時または余効すべりにより太平洋プレート上部境界の不透水層が破れ,直上のPHSスラブに高間隙水圧水が流入して断層強度を下げ活発な活動を引き起こした,というモデルを提唱しました.震源の移動から計算されるpermeabilityは10-15–10-19です.

J. Nakajima, K. Yoshida, and A. Hasegawa
An intraslab seismic sequence activated by the Tohoku-oki earthquake: Evidence for fluid-related embrittlement
J. Geophys. Res., 118, 3492-3505, doi:10.1002/jgrb.50246, 2013.   LINK


スラブ内の不思議な地震クラスター

新潟県新発田市下の深さ155kmで発生している稍深発地震の解析です.波形解析の結果,非常に狭い領域(1km*1km*1km程度)の中で,正断層と 逆断層地震が発生していることがわかりました.また,波形が相似な地震も複数発生しているというおもしろい特徴があります.正断層・逆断層の地震の発生は,エクロジャイト化に関わる局所的な応力変化で説明しました.Nature/Scienceにリジェクトされたあと,Geologyで出版することができました.査読者がなかなか見つからなく,査読に長い時間を要しました.Editorからは「査読者8人に断られた.遅れてごめん」という返事がきました.論文執筆・改訂ではHackerさんに大変お世話になりました.的確なコメント,頼もしかったです.

J. Nakajima, N. Uchida, T. Shiina, A. Hasegawa, B.R. Hacker, and S.H. Kirby
Intermediate-depth earthquakes facilitated by eclogitization-related stresses
Geology, 41, 659-662, 2013.   LINK


3.11による既存断層の再活動

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)の約1ヶ月後の4月7日に,宮城県沖のスラブ内でM7.1の地震が発生しました.M7.1の地震の震源域の詳細な速度構造を推定したところ,海洋マントルが低速度になっている領域でのみ余震が発生していることがわかりました.余震の並びとプレート 境界とのなす角は約60度であり,アウターライズで生成された含水化した正断層の再活動して,M7.1の地震を発生させたことが示唆されます.M7.1の地震のメカニズム解は逆断層であり,M9の地震のプレート境界でのすべりによる応力擾乱によって発生したと考えることができます.

J. Nakajima, A. Hasegawa, and S. Kita,
Seismic evidence for reactivation of a buried hydrated fault in the Pacific slab by the 2011 M9.0 Tohoku Earthquake
Geophys. Res. Lett., 38, L00G06, doi:10.1029/2011GL048432, 2011.   LINK


スラブ構造と脱水脆性化〜北海道〜

北海道東部において速度トモグラフィを行い,二重深発地震面の下面に沿ってP波が顕著な低速度になっていること(ただし,S波はやや高速 度)を指摘しました.S波が遅くなっていないので,解釈に困ったのですが,結局は「水」が原因であろうという結論にしました.その後,フランスのReynardさんがこの結果を再解釈して,P波の速度低下は異方性によって説明可能である,という論文を書いています(Reynard et al.,GRL, 2010).Reynard 論文ではスラブマントルは無水であり,shear instabilityで地震が発生している結論づけています.同じトモグラフィ結果の解釈が真逆になりました.スラブマントルの地震の発生メカニズムはまだ議論があります.今後の研究に期待します.

J. Nakajima, Y. Tsuji, A. Hasegawa, S. Kita, T. Okada, and T. Matsuzawa
Tomographic imaging of hydrated crust and mantle in the subducting Pacific slab beneath Hokkaido, Japan: Evidence for dehydration embrittlement as a cause of intraslab earthquakes
Gondwana Research16, 470-481, 2009.    LINK


スラブ構造と脱水脆性化〜東北・関東〜

関東地方において,太平洋プレートの海洋性地殻の低速度域の及ぶ深さが東北に比べ40-70kmも深いことを指摘しました.その理由として,太平洋プレートの直上にフィリピン海プレートが存在するために(高温のマントルウエッジと出会うことなく)冷たいまま沈み込んでいるこ とで,海洋性地殻の脱水反応が遅れていると解釈しました.また,海洋地殻内の地震活動は脱水が活発に起こっている場所(地震波速度が遅い場所)で多く発生しているという特徴 もあります.辻くんの修士論文の一部を再解析したものです.Tsuji et al. (GRL, 2008)の続きです.

J. Nakajima, Y. Tsuji, and Akira Hasegawa,
Seismic evidence for thermally-controlled dehydration in subducting oceanic crust
Geophys. Res. Lett., 36, L03303, doi:10.1029/2008GL036865, 2009.   LINK